国策としてのSDGs(目標)によるESG投資(非財務情報投資活動)は日本だけでなく全世界に必要不可欠な脱炭素対策(地球温暖化防止対策)として重要な投資活動となっています。
SDGsとは「国連が採択した17の目標」で、「SustainableDevelopmentGoals(持続可能な開発目標)」の略称です。これは2015年9月の国連サミットで採択されたもので、国連加盟193か国が2016年から2030年の15年間で達成するために掲げた目標です。17の大きな目標と、それらを達成するための具体的な169のターゲットで構成されています。さらにモニタリングや評価の主役はKPI(重要業績評価指標:KeyPerformanceIndicators)となる232の指標があります。
ESGとは「Environment(環境:E)」「Social(社会:S)」「Governance(企業統治:G)」の頭文字を取って略称ESGと呼びます。ESG投資とは、既存の投資方法の財務情報だけでは無く、ESGという非財務情報の要素を加えた投資判断、すなわちアセット運用(有価証券)やプライベートエクイティ運用(みなし有価証券)を含めオルタナティブ性を持った脱炭素対策(地球温暖化防止対策)を考慮した投資基準の事を言います。グリーンボンドという債券やグリーンファイナンスなどの融資等のファイナンス方法もあります。
世界最大規模の公的年金基金もESG投資を採用しており、日本でも日本最大の運用会社であるGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人:旧年金福祉事業団)もESG投資を採用しています。この背景には、PRI(PrinciplesforResponsibleInvestment)という、国連にサポートされている責任投資原則があります。これは、2006年、当時の国際事務総長であるコフィー・アナン氏が金融業界に対して提唱したイニシアティブで2008年のリーマン・ショック以降、欧米では投資家の関心が短期的経営指標から長期的経営指標に変化したことからESG投資への関心が広がりESG投資の市場は現在も拡大を続け世界の投資マネーがESG市場に集中しています。
投資期間として中長期的に投資をし続けるという事が何より通常の投資とは異なります。SDGsの諸問題を解決する為には、短期的な投資では、諸問題を解決するには時間が要してしまう問題を抱えています。環境問題を始め、人権問題、等の根本を解決する為には中長期的に問題と向き合う必要があります。
世界では、2006年のPRI発足時には、署名機関数63、署名アセットオーナー数32、運用残高合計8.5兆ドル(850兆円)でした。2020年現在、署名機関数3,038、署名アセットオーナー数521で、資産運用残高は世界で合計127兆ドル(約1京2,700兆円)にまで増加しています。今後益々ESG投資の規模は拡大していくと思われます。
令和2年10月26日に菅総理による所信表明演説が行われました。テーマは以下の9つでした。「①新型コロナウイルス対策と経済対策/②デジタル社会/③脱炭素社会の実現/④地方創生/⑤人材の流動化/⑥少子化対策、社会保障/⑦震災復興、災害対策/⑧外交、安全保障/⑨自助、共助、公助、絆」であり、温暖化への対応、対策は経済成長の制約ではなく、積極的に温暖化対策を行うことが、産業構造や経済社会の変革をもたらし、大きな成長につながるという発想の転換が必要であると提言し、「2050年カーボンニュートラル、脱炭素社会の実現を目指す」と宣言しました。
以上のように、世界的なSDGsとESG投資が脱炭素対策となっているものの、日本は独特な文化と商習慣により必ずしも国際社会とは一致しない部分もあります。たとえば、少子高齢化が進む日本における地方自治体の財政難により社会インフラ(上下水道、ごみ焼却炉設備、公共インフラ等)の整備費用が枯渇しているなど、地方自治体が居住者に対して、今後十分な持続可能な行政サービスの提供が可能か不安の募る状況です。民間企業が国際的なESG投資の基準を認知、理解、活用、運用し日本独自の投資活動を見出して活性化していく為にESG投資の環境整備が急務であると考えます。
環境省が主導している「グリーンボンド発行促進プラットフォーム」は、グリーンボンド及びグリーンファイナンス等の発行や融資に関わる経費の一部を補助金形式にて補う画期的な施策であります。また、年々更新される「地方創生SDGs・ESG金融調査・研究会」による「上場企業及び機関投資家等における地方創生SDGsに関する調査・検討会」によると、内閣官房・金融庁・消費者庁・外務省・文部科学省・経済産業省・環境省・農林水産省・国土交通省と横断的な各省庁による重要なアクションであると思われます。
日本の地方都市のインフラを少子高齢化が進む中でも価値ある財産だと見直し、持続可能なものとするため、地方自治体の財政難の回避のため、そして民間の資金を呼び込み投資活動を活発化させていくために、世界で約数千兆円という巨大な資金が動き出しているESG投資の考え方を日本の風習、文化、地域社会に合ったESG投資を探求するため、ここに「一般社団法人ESG投資研究所」を発足し社会に貢献する事を設立趣意としたいと考えます。
令和3年12月吉日
「一般社団法人ESG投資基盤整備機構」初期設立準備室メンバー
設立発起人戸澤崇光(元野村アセットマネジメント)
同発起人大谷尚(セブンヒルズゲート代表)
同発起人邉津太郎(フィナンテック社)
同発起人木内均(元自民党国会議員)
同発起人伊藤仁志(リニューアブル・ジャパン創業者)
同発起人降旗京二(公認会計士)
同発起人中込秀樹(弁護士)